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各種事業 分子研リポート2007 | 分子科学研究所

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(1)

大学共同利用機関である分子科学研究所は,分子科学研究推進の中核として所内外の頭脳による共同研究と設備の 共同利用を積極的に推進し,周辺分野を含めたコミュニティの世界的水準での活性化を重要な役割としている。法人 化後,研究所は様々な提案を行い,文部科学省,自然科学研究機構,日本学術振興会による公募に採択されて予算配 分を受け,多様な事業を展開している。近年の政府財政の改革に伴い,大学に於ける研究設備の老朽化に対する手当 の不十分さから,化学の分野の研究者はその研究水準の維持向上を図る上で極めて危機的な状況に曝されている。こ の危機に対処するために,平成19年度からの5カ年計画としてスタートした「化学系研究設備有効活用ネットワー クの構築」事業は,全国の大学の化学系研究者の支持を受けて,全国的な設備の相互利用を可能にするインターネッ トによる設備利用予約と利用料金の受け渡しシステムを構築し,使用困難な設備の復活再生と新規最先端設備の重点 的配置を行うものである。この事業を大学共同利用期間としての分子科学研究所が行い,全国の大学の教育研究の充 実に資すると共に,我が国の化学研究のより一層の活性化に寄与する事は重要であろう。一方で,研究所の研究活動 の飛躍的向上を図るという観点から,理化学研究所との連携融合事業「エクストリームフォトニクス」が,平成17 年度からスタートしている。これは,物理と化学の2領域にわたるフォトニクスの問題を基礎的な量子論の応用によ る分子の状態制御と先端光源開発までを含めた最先端の課題として取り組むものである。自然科学研究機構が主催す る「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」では,分子科学研究所が主体的にまとめている「巨大計算 新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成」,5機関共同で進めている「イメージング・サイエンス」 および「自然科学における階層と全体」プロジェクトを実施しており,それぞれ着実な成果を上げ進展に寄与している。 日本学術振興会が行っている多国間交流事業「アジア研究教育拠点事業」では,研究所が提案する「物質・光・理論 分子科学のフロンティア」が平成18年度より採択され,中国,韓国やタイ,マレーシア,シンガポールなど東南ア ジア各国の若手研究者の交流と育成,共同研究プログラムを積極的に実行している。また,大学ばかりでなく産業界 の研究開発の支援を行う文部科学省の先端研究施設共用イノベーション創出事業「ナノテクノロジーネットワーク」 では,本年度より「中部地区ナノテク総合支援」プロジェクトの幹事機関として名古屋大学,名古屋工業大学,豊田 工業大学とともに各種装置の共用支援を行っている。最も規模の大きな事業としては,文部科学省の「最先端・高性 能スーパーコンピューターの開発利用」プロジェクトに於ける「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研 究開発」拠点として,ナノ分野の「グランドチャレンジアプリケーション研究」を推進している。

このような,各種事業を通して大学や産業界の研究者が分子研に集い,所内の研究者との活発な情報交換と共同研 究が実施されることによって,分子科学やその周辺分野の研究推進に大きく寄与するであろう。

5.各種事業

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5-1 化学系研究設備有効活用ネットワークの構築(文部科学省)

国立大学における研究設備の老朽化等による危機的な状況を改善し,我が国の研究教育の基盤崩壊を防ぐとともに, 先導的研究を推進するため,化学系の教育研究組織を持つ全国の機関が結集し,全国的な連携調整の下に「老朽化し た研究設備の復活再生」及び「最先端研究設備の重点的整備」を行い,これらにより整備された設備及び既存の研究 設備で外部に公開可能な設備を対象として,全国・地域設備活用ネットワークを構築し,大学間の研究設備の有効活 用を図ることを目的として,特別教育研究経費による「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」(平成19〜 23年度)がスタートした。本ネットワークには全国73の機関が参加している。19年度は調査費相当の 950 万円が 計上されたに止まったが,この事業が正式に認められ,ネットワークの全国的な周知を図るためのホームページ(http:// chem- eqnet.i ms.ac.j p)が開設された。ここには,全国的な相互利用の試行を行うための設備リストや予約課金システ ムが搭載され,機器管理者とのやり取りや設備利用終了後の課金処理と自動集計が可能となっている。平成20年6 月には,大幅なシステムのアップグレードが行われ,設備管理者の権限の強化やマシンタイムの5分ごとの予約設定 などユーザーフレンドリーなソフトウエアに進化する予定である。設備のネットワーク相互利用には56機関が設備 を供出し,117台の装置が運用されている。平成20年1月現在の登録研究室数は 1172 研究室であり登録利用者数は 4286 名に上っている。また,利用件数は 4800 件に達している。試行1年目は,正にユーザー自身も試行してみると いう気持ちが強く,頻繁に外部の設備を使うまでには至っていない。しかし,各研究者がその幅を広げて様々な周辺 分野の研究内容にも取り組んで行くことが可能になった点は,評価されている。今後,より使いやすい環境への整備 を図ることによって大学間相互利用の割合を増やして行く必要がある。

平成20年度概算要求は,文部科学省から 50 億円強の予算が計上されたが,財務省査定は1億円に止まり,多くの 研究者の望みを糸でつなぐ状況となった。世話人の落胆を全国の皆さんが逆に励ましへと繋げて頂いたことは大変あ りがたいことであった。予算の内の8割を十分ではないが緊急に措置が必要な設備の復活再生に投入し,最小限の対 応を図る。予算の残りの2割の内,旅費や運営費以外として,最終的には 1000 台規模の研究設備の予約・管理・課 金が可能となるシステムの高度化にむけた大改造に当てる予定である。特に,各設備の管理者の裁量が大幅に強化さ れ,課金の設定,装置利用時間の修正,メンテナンス時間の設定など運用に必要な種々の機能が搭載される。

大学共同利用機関としての分子科学研究所の本活動が,財政的に厳しい状況の中,我が国の化学の教育研究活動を 支える基盤の構築に寄与することは,化学系の唯一の共同利用機関としての重要な役割であろう。全国の研究者の声 に支えられてこれを確立して行きたい。

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5-2 連携融合事業「エクストリームフォトニクス」 (文部科学省)

平成17年度から理化学研究所との連携融合事業として「エクストリーム・フォトニクス」を推進している。「光を 造る」,「光で観る」,「光で制御する」という3つの観点から,両研究所が相補的に協力交流することによって,レーザー 光科学のより一層の進展を図ろうとするプログラムである。分子研側からは,3つの観点のそれぞれにおいて以下の 課題を選定し,いずれも精力的に研究を推進してきた。

(1) 「光を造る」

「光波特性制御マイクロチップレーザーの開発」(平等)

「新複合フッ化物の真空紫外発光デバイスとしての探索と新 V UVフェムト秒光源の実現」(猿倉) (2) 「光で観る」

「時間・空間分解分光による固体表面・ナノ構造物質表面における反応研究」(松本)

「エクストリーム近接場時間分解分光法の開発」(岡本)

「タンパク質立体構造に基づく機能性発光分子の開発と生体機能解析システム」(小澤) (3) 「光で制御する」

「アト秒コヒーレント制御法の開発と応用」(大森)

「紫外強光子場による反応コヒーレントコントロール」(菱川)

「高強度極短パルス紫外光を用いた超高速光励起ダイナミックスの観測と制御」(大島)

これらの課題の成果は,既にScience 誌,Physical Review Letters 誌,Nature Methods 誌などの超一流の学術誌に度々 発表されただけでなく,多数の新聞各紙で取り上げられ社会的にも大きな注目を集めた。また,日本学士院学術奨励賞, 日本学術振興会賞,文部科学大臣表彰若手科学者賞,日本化学会進歩賞,日本分光学会奨励賞,光科学技術研究振興 財団研究表彰など,多くの権威ある表彰の対象となってきた。また,マイクロチップレーザーの開発では,産業界と の共同研究が進展した。

この他に,両研究所の研究打合せや成果報告のため,毎年2回,定期的に理研・分子研合同シンポジウムを開催し ている。17年度は,4月に理化学研究所にて第1回の合同研究会を開催した。この研究会では,各参加グループのリー ダ ー が そ れ ま で の 研 究 成 果 を 紹 介 し た 上 で 今 後 の 研 究 計 画 を 披 露 し, こ れ を 中 心 に 議 論 を 行 っ た。 こ れ に 対 し て, 11月には「分子イメージングとスペクトロスコピーの接点」を主題とした研究会を行い,より突っ込んだ議論を進 めた。18年度は,4月に理化学研究所にて第3回理研・分子研合同シンポジウムを開催した。このシンポジウムで は特に「エクストリーム波長の発生と応用」をテーマとし,テラヘルツ光やフェムト秒X線の発生と利用について議 論した。さらに,11月には「コヒーレント光科学」を主題とした第4回の研究会を行い,この方面における所外の 研究者にも講演を依頼し,より突っ込んだ議論を進めた。19年度は,4月に理化学研究所にて「バイオイメージング」 をテーマに第5回シンポジウムを開催した。ここでは,高感度レーザー顕微鏡やテラヘルツ分光を利用した生体系の イメージングについて議論した。さらに,11月には「先端光源開発と量子科学への応用」を主題とした第6回シン ポジウムを行い,高強度超短パルスレーザーを始めとする先端レーザー光源の開発と,それらを原子分子クラスター あるいは表面ダイナミクスの観察や制御へと応用した研究成果と今後の展望について議論した。いずれのシンポジウ ムにおいても,両研究所内外の研究者に講演を依頼し,関連分野の先端について深い議論を行った。また,このプロ グラムを中心に,所内に日常的な議論の場としての光分子科学フォーラムを設け,光分子科学の進展を図っている。

(4)

5-3 分野間連携による学際的 ・ 国際的研究拠点形成事業 (自然科学研究機構)

5-3-1 概要

自然科学研究機構では,新分野創成型連携プロジェクトとして「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」 を行っている。これは,機構内で2月に公募され,審査によって採択課題が決められ,年度末に評価を行っている。

分子科学研究所からは,研究所が主体的にまとめている「巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中 核拠点の形成」,5機関共同で進めている「イメージング・サイエンス」および「自然科学における階層と全体」プ ロジェクトに多くのメンバーが参加している。またこの他に,少人数のグループ研究が走っている。「自然科学にお ける階層と全体」では,世界的に著名な研究者を海外から招き,“ International S ymposium on Hierarchy and Holism (IS HH)

—B ridging across D ifferent Hierarchies in Natural S ciences—” を岡崎コンファレンスセンターにおいて開催した。これは, 広い範囲の研究者に自然科学研究機構の活動と組織を広く知らしめると共に,細分化・専門化した蛸壺的な研究の流 れが支配的となっている現状を脱皮し,これら各階層を支配する統一的な概念を探ろうという趣旨で行われた。

5-3-2 巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成

本プロジェクトは,方法論の開発からそれに基づいた巨大計算にいたるまで,分子・物質の第一原理から出発した 計算科学研究の中核拠点を形成し,物質科学および分子・物質を核とするナノサイエンス,バイオサイエンス等の自 然科学の諸分野における世界の主導権を獲得することを目的としている。また,分野間連携に基づいて,分子科学, 核融合科学,生命科学,天文学といった異なる自然科学階層に属する各分野での異なる物質観,異なる方法論をお互 いに共有し,また融合することにより,特に大規模複雑系を構成する分子・物質に対する計算科学研究にブレークス ルーを実現するとともに,それぞれの分野においても方法論に新機軸をもたらし,学際的新分野を形成することを目 指している。

更に,機構内外におけるこのような活動を通して,分子・物質シミュレーションナショナルセンター形成へ向けて の基盤形成を行っている。

このため,2007年度は,連携研究,ワークショップ,人材育成等について以下に示すような活動を行った。 (1) 連携研究

連携推進課題(3課題)(*責任者)

・巨大計算に向けた粒子シミュレーション手法の開発(分子研・岡崎

、平田、永瀬、斉藤、核融合研・堀内、天 文台・富阪、東大・北尾、産総研・森下)

・分子多量体形成と生理機能(基生研・望月

、生理研・永山、分子研・岡崎、平田、東大・北尾)

・物質・電磁場相互作用系のシミュレーション(分子研・信定

、米満、斉藤、核融合研・中島、東北大・森田) 連携課題(14課題)

・プラズマ大規模シミュレーションのための効率的並列計算手法開発(核融合研・堀内、中島)

・輻射輸送計算を用いた星間化学進化の研究(天文台・富阪)

・ミトコンドリアの energetics simulation(生理研・永山)

・概日リズム振動の生体分子反応シミュレーション(基生研・望月)

・両親媒性分子水溶液の大規模分子動力学計算(分子研・岡崎)

・量子古典結合多粒子系の非平衡集団運動制御の理論(分子研・米満)

・界面和周波発生分光の理論計算手法の開発(森田)

(5)

・ナノ分子の量子化学計算(分子研・永瀬)

・電磁場と露に相互作用した多電子ダイナミックスの解析(分子研・信定)

・3次元 R IS M による分子認識(分子研・平田)

・分子動力学計算に基づく凝縮系ダイナミックス(分子研・斉藤)

・第一原理分子動力学計算による液体及びアモルファスのポリモルフィズム(産総研・森下)

・生体超分子の立体構造変化と機能(東大・北尾)

・界面和周波発生分光の理論計算手法の開発(東北大・森田) (2) ライブラリの整備

(3) ワークショップ

・第4回連携シンポジウム 2月13日

・分子・物質シミュレーション中核拠点セミナー 第21回〜第27回

・討論会、学会の共催 (4) 人材育成

第3回分子・物質シミュレーション中核拠点形成事業人材育成講座

「分子シミュレーションスクール—基礎から応用まで—」 12月17日−21日 (5) 実施体制

機構内11グループ 理論・計算分子科学、天文台、核融合研、生理研、基生研 機構外3グループ 東大、東北大、産総研

5-3-3 イメージング・サイエンス

(1) 経緯と現状

研究所の法人化に伴い5研究所を擁する自然科学研究機構が発足し,5研究所をまたぐ新研究領域創成の一つのプ ロジェクトとして「イメージング・サイエンス」が取り上げられることとなった。以下に,その経緯と現状について 述べる。

平成16年度に機構が発足した後,研究連携室で議論がなされ,機構内連携の一つのテーマとして「イメージング・ サイエンス」を立ち上げることが決定された。連携室員の中から数名の他に,各研究所からイメージングに関連する 研究を行っている教授・准教授1〜2名が招集され,「イメージング・サイエンス」小委員会として,公開シンポジ ウムその他プロジェクトの推進を担当することとなった。

平成17年8月の公開シンポジウム(後述)の後,小委員会において,本プロジェクトの具体的な推進について議 論を行った。この機会に,各研究所が持つ独自のバックグラウンドを元に,それらを結集して,広い分野にわたる波 及効果をもたらすような,新しいイメージング計測・解析法の萌芽を見いだすことが理想,という議論がなされた。 それに向けた方策として,機構内の複数の研究所にまたがる,イメージングに関連する具体的な連携研究テーマをい くつか立てる案を連携室に提案したが,予算の問題等もあってこれは実現しなかった。

現状では,機構の特別教育研究経費「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成」の新分野創成型連携プロジェ クトの項目として,イメージングに関連した研究所をまたがる提案が数件採択されている(「イメージング・サイエ ンス—超高圧位相差電子顕微鏡をベースとした光顕・電顕相関3次元イメージング —」など)。これが上述の提 案に代わるものとして,「イメージング・サイエンス」に係る具体的な機構内連携研究を推進している。

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(2) 実施された行事

このプロジェクトの具体的な最初の行事として,各研究所のイメージングに関わる興味の対象と研究ポテンシャル を,5研究所が互いに知ることを目的として,「イメージング・サイエンス」に関する公開シンポジウムを開催する こととなった。

平成17年8月8日−9日に,「連携研究プロジェクト Imaging S cience 第1回シンポジウム」として,公開シンポジ ウムが岡崎コンファレンスセンターで開催された。このシンポジウムでは,天文学,核融合科学,基礎生物学,生理学, 分子科学におけるイメージング関連研究に関する,機構内外の講師による16件の講演,及び今後の分野間連携研究 に関する全体討論が行われた。参加者は機構外36名,機構内148名,大学院生80名,合計264名を数えた。また, 講演と全体討論の内容は,175 ページのプロシーディングス(日本語)としてまとめられ,同年12月に発行された。 この機会によって機構内のイメージング・サイエンス関連研究に関する研究所間の相互理解が進み,その後の機構内 連携研究の推進に相当に寄与したと考えられる。

平成18年3月21日には,立花隆氏のコーディネート,自然科学研究機構主催で「自然科学の挑戦シンポジウム」 が東京・大手町で開催された。これは,一般の観客を対象に,機構の研究アクティビティーをアピールすることを目 的として,立花氏が企画して実現したもので,当日は約600名収容の会場がほぼ満席となる一般参加者があった。こ のシンポジウムの中で,「21世紀はイメージング・サイエンスの時代」と称して,イメージングを主題とするパネル ディスカッションが組まれた。ここにはパネラーとして「イメージング・サイエンス」小委員会委員を中心とする講 師によって,5研究所全てから,各研究所で行われているイメージング関連の研究の例が紹介され,最後に講師が集 まりパネルディスカッションが開かれた。このシンポジウムの記録の出版は諸々の事情で遅れていたが,平成20年 に出版の予定で編集作業が行われている。

平成18年12月5日−8日には,第16回国際土岐コンファレンス(核融合科学を中心とする国際研究集会)が核 融合研究所主催で土岐市において開催された。この会議ではサブテーマが“ A dvanced Imaging and Plasma D iagnostics” とされ,プラズマ科学に限らず,天文学,生物学,原子・分子科学を含む広い分野におけるイメージング一般に関す るシンポジウムとポスターセッションが企画された。分子科学研究所からも,数名が参加し,講演及びポスター発表 を行った。また平成19年8月23日−24日には,「画像計測研究会2007」が核融合科学研究所一般共同研究の一環 として,核融合科学研究所において開催された。

5-3-4 自然科学における階層と全体

自然科学研究機構の新分野創成型連携プロジェクトとして実施されている「自然科学における階層と全体」は,分 子科学研究所,生理学研究所,基礎生物学研究所により実施されている「プロジェクト1:生物系における情報統合 と階層連結」と核融合科学研究所,国立天文台を中心として実施されている「プロジェクト2:重力多体系・プラズ マ系における連結階層シミュレーション研究拠点形成―長距離相互作用が支配する多体複雑系での連結階層シミュ レーション研究拠点形成―」の二つのプロジェクトを中心にしている。全体会議,シンポジウム等は,2つのテー マを合同で扱い,自然科学に於ける階層と全体という新しい視点で自然科学の理解を深め,新分野創成に繋げて行く ことを目指している。

分子科学研究所が主に関与しているプロジェクト1の概要は,以下の通りである。生物系における研究においては, 遺伝子や蛋白質に関する分子レベルでの膨大な情報が得られている一方で,これら分子レベルの情報から,生理機能 の発現や形態形成などの「生物らしい」振る舞いが生じるプロセスについては,未解明な点が多く残されている。こ

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れは,生体が,分子,細胞,器官,個体といった異なる階層により構成されていることにも起因している。生体機能 の成り立ちを知るためには,各階層において「階層を構成する素子(エレメント)についての理解」から始まり,「階 層内でのエレメントの複合体化と情報のやりとりによる機能創出機構」の解明,さらには「上位階層への連結機構」 を明らかにすることが必要である。分子・細胞の階層を例にあげると,各分子の機能を明らかにするだけではなく, 分子複合体形成による新規機能の創出,分子間の情報伝達による機能統合を知ることにより,はじめて,細胞機能の 成り立ちの仕組みが理解できると考えられる。すなわち,遺伝子や蛋白質など分子レベルの情報が,細胞機能のよう なマクロなレベルへ伝達される過程を理解すること,分子が担う情報がよりマクロな階層で統合され,細胞や組織さ らには個体の振る舞いが創発される過程を理解することが,我々が取り組むべき課題であるとも言える。

本プロジェクトにおいては,異なる研究バックグラウンドを有する研究者が,上記のような意識を共有した上で, 有機的な連携を計りつつ,「生物系における情報統合と階層連結」に関する包括的理解に向けて,具体的には以下に 述べるような研究を行う。分子科学研究所からは,小澤岳昌准教授がテーマ(1),青野重利教授がテーマ(2)に関す る研究を進める。

テーマ(1):生体内における情報統合および機能統合を解析するための新規な研究ツールの開発を目的として研究 を行う。本研究では,タンパク質再構成系(protei n reconsti tuti on system)という新たな概念に基づくレポータータン パク質を創案・開発し,生きた動植物個体内で機能する生体分子を可視化するための,新たな原理に基づくプローブ 分子を開発する.具体的には,R NA ,タンパク質間相互作用,タンパク質リン酸化,酵素活性,セカンドメッセンジャー, ステロイドホルモン等を標的とし,蛍光あるいは発光に情報変換するプローブ分子を開発する。また,他の研究グルー プの研究に対し,このようにして開発したプローブ分子の積極的な適用を計る。

テーマ(2):分子間情報伝達による情報統合および機能統合の分子機構解明を目的として研究を行う。本研究では, 外部情報による遺伝子発現ネットワークの制御に関与するセンサー型転写調節因子,外部情報(外部環境シグナル) による細胞運動制御系である走化性制御系を対象として研究を行う。特に,センサー型転写調節因子による外部情報 センシング機構および遺伝子発現調節機構の解明,走化性制御系における情報統合機構の解明,ならびに統合された 情報が如何にして細胞の運動制御というマクロな性質に反映されるのか,その分子機構の解明を中心に研究を進める。

テーマ(3):分子階層における情報の統合により細胞階層での機能を理解することを目的として研究を行う。本研 究では,イオンチャネル・受容体等の神経細胞の機能素子の,分子間相互作用や分子複合体形成による機能修飾に関 する研究を行う。具体的には,代謝型グルタミン酸受容体の分子複合体形成による G 蛋白質応答の種類の切り換え, A T P 受容体チャネルの発現状況依存的な構造と機能の変化,細胞長伸縮に寄与する陰イオントランスポーターファミ リーに属するプレスチンの分子複合体の同定とその機能的意義の解析に焦点をあてて研究を進める。

テーマ(4):生体情報の統合による個体階層での行動の規定について理解することを目的として研究を行う。本研 究では,空腹等の生体情報や,脂肪細胞由来の液性調節因子レプチン等による情報が視床下部で統合されて,摂食行 動やエネルギー消費行動に結びつく機構を明らかにする。なかでも,視床下部における生体情報の統合に重要な役割 を果たしている酵素 A M P キナーゼの働きに着目して,この遺伝子を改変した実験動物等を用いて行動レベルでの研 究を進める。

テーマ(5):情報が統合され機能が創出される過程を,数理的手法を用いて研究する。本研究では,シグナル分子 の個別的な相互作用から,分子の時空間分布の非一様性が作り出され,生体機能が生まれる過程を,ダイナミクスと して捉え,微分方程式系などを用いて解析する。具体的には連携内の他のグループの実験データを対象とした共同研

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究を目指す。生体機能創出に必要な,分子間相互作用の条件を,力学系理論を元に定める。これにより,分子階層に おける情報を統合し,機能階層の視点から意義付けを行うと同時に,それぞれの階層における振る舞いを予測する。

テーマ(6):分子キラリティのような分子レベルでの情報が,細胞や個体といった上位階層の情報に展開されてい く過程の解明を目的として研究を行う。本研究では,発生における生物の左右性決定において,マウス初期胚の繊毛 が作る左向きの水流(ノード流)の役割を解明する。ケモルミネッセンスや二光子顕微鏡といったイメージング技術 を用い,in vivoでノード流がどのような水流のパターンを作るか調べる。また水流が体の右側と左側の細胞に何らか

の差を生み出す機構として,シグナル分子の不均一な拡散,あるいは分子ではなく物理的な刺激が働いている可能性 を想定し,シミュレーションによる検討を行うと共に,カルシウム濃度や膜電位の測定,分子プローブによってその 実体を探索する。

今年度は,5月16日,17日の二日間,岡崎コンファレンスセンターにおいて「自然科学における階層と全体」第 4回シンポジウムを開催した。本シンポジウムでは,2件の特別講演の他,プロジェクト1ならびにプロジェクト2 に参加している研究者,および外部からの講演者による13件の講演が行われた。

また,2月21日から23日の3日間,岡崎コンファレンスセンターにおいて「International S ymposium on Hierarchy and Holism—B ridging A cross D ifferent Hierarchies in Natural S ciences」と題した国際シンポジウムを開催した。

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5-4 アジア研究教育拠点事業「物質・光・理論分子科学のフロンティア」

(日本学術振興会)

21世紀はアジアの時代と言われている。分子科学においても欧米主導の時代を離れ,新たな研究拠点をアジア地 域に構築し,さらにはアジア拠点と欧米ネットワークを有機的に接続することによって,世界的な研究の活性化と新 しいサイエンスの出現が期待される。

日本学術振興会は,平成17年度より新たな多国間交流事業として,アジア研究教育拠点事業(以下アジアコア事業) を開始した。本事業は「我が国において先端的又は国際的に重要と認められる研究課題について,我が国とアジア諸 国の研究教育拠点機関をつなぐ持続的な協力関係を確立することにより,当該分野における世界的水準の研究拠点の 構 築 と と も に 次 世 代 の 中 核 を 担 う 若 手 研 究 者 の 養 成 を 目 的 と し て( 日 本 学 術 振 興 会 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 抜 粋:http: // www.jsps.go.jp/j-bilat/acore/01boshu_ acore.html)」実施されるものである。分子科学研究所は,「物質・光・理論分子科 学のフロンティア」と題して,分子科学研究所,中国科学院化学研究所,韓国科学技術院自然科学部,台湾科学院原 子分子科学研究所を4拠点研究機関とする日本,中国,韓国,台湾の東アジア主要3カ国1地域の交流を,アジアコ ア事業の一環として平成18年度にスタートさせた。アジアコア事業の特徴の一つとして,互いに対等な協力体制に 基づく双方向交流が挙げられる。本事業においても,4拠点研究機関のそれぞれがマッチングファンドを自ら確保し ており,双方向の活発な研究交流が着実に進展している。また,4拠点研究機関以外の大学や研究機関が研究交流に 参加することも可能である。平成19年度までの2年間の活動の概要を以下にまとめる。

(1) 共同研究

物質分子科学においては,π電子系有機分子を基盤とする機能性ナノ構造体の構築と機能開拓,先端ナノバイオエ レクトロニクス,自己組織化金属錯体触媒の開発(以上,中国との共同研究),超高磁場 NMR を用いた蛋白質−ペプ チド相互作用の精密解析(韓国との共同研究),バッキーボウルの合成と物性(台湾との共同研究)に関する研究が 進展した。

光分子科学においては,特異なナノ分子システムのナノ光学,テラヘルツ時間領域分光法を用いたジシアノビニル 置換芳香族分子の分子間振動および構造(以上,中国との共同研究),コヒーレントレーザー分光による反応ダイナミッ クスの解明(台湾との共同研究)に関する研究が進展した。

理論分子科学においては,生体分子中における量子過程の計算機シミュレーション(台湾との共同研究)に関する 研究が進展した。

(2) 共同セミナー

18年度は,「中国・日本グリーン化学合成シンポジウム」(中国・北京),「第1回物質・光・理論分子科学のフロ ンティア冬の学校」(中国・北京),「第1回全体会議」(日本・岡崎)が開催された。

19年度は,「中国・日本機能性分子の合成と自己組織化シンポジウム」(中国・北京),「日中ナノバイオ若手研究 者交流」(中国・北京),「有機固体の電気伝導と光伝導に関する日中合同セミナー」(中国・北京),「先端レーザー分 光シンポジウム」(日本・神戸),「次世代触媒創製を目指した機能物質シンポジウム」(中国・北京),「物質・光・理 論分子科学のフロンティア」冬の学校(日本・岡崎),「第2回全体会議」(韓国・デジョン)が開催された。

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5-5 ナノテクノロジーネットワーク事業「中部地区ナノテク総合支援」

(文部科学省)

5-5-1 概要

分子科学研究所は,名古屋大学,名古屋工業大学,豊田工業大学の愛知県内機関と連携して,文部科学省の先端研 究施設共用イノベーション創出事業・ナノテクノロジーネットワークプロジェクトを受託し,中部地区ナノテク総合 支援事業を展開している。中部地区にナノテクノロジー総合支援拠点を形成し,ナノ計測・分析(分子研・名工大), 超微細加工(名大・豊工大),分子・物質合成(分子研)の3つの指定領域にわたって,超高磁場 N M R ,先進電顕等 の最先端機器利用,有機・生体関連分子等の設計合成評価,最先端設備技術を用いた半導体超微細加工等を総合的に 支援している。特に,各要素単体の支援に留まらず,4機関の特徴を活かした連携融合支援を推進する予定である。

分子研では,分子スケールナノサイエンスセンターが母体となり,超高磁場 N M R ,300k V分析透過電子顕微鏡, 時空間分解近接場光学顕微鏡,紫外磁気円二色性光電子顕微鏡などの先端機器利用や,有機・生体関連分子等の設計 合成評価,大規模量子化学計算支援を実行している。今年度は初年度のため,昨年度までのナノ支援プロジェクトと 比べてやや申請課題数が少ないが,それでも協力研究36件,施設利用18件(1月9日現在)を採択し,うち協力研 究25件,施設利用19件は実施済である。所内利用も前期だけで23件に上っている(後期未集計)。

表1に分子科学研究所が担当する支援要素の一覧,表2に平成19年度採択課題一覧を示す。支援は,担当研究者 と共に研究を進めてゆく協力研究と,装置に関する十分な知識と経験を有する研究者が随時の申し込みによって当該 装置を利用する施設利用の何れかの申し込みを通して行われる。課題申請等の詳細は http://nanoi ms.i ms.ac.j p/ にあり, 本務の共同利用と同様に,通常申請(年2回)と随時申請がある。申請は分子スケールナノサイエンスセンター運営 委員会の下部組織であるナノネット小委員会で審査される。本務の共同利用と異なり,本事業では産業界からの申請 も無償(ただし結果の公開が義務付けられる)で幅広く受け付けている。

表1 支援装置・プログラム一覧(分子科学研究所担当分)

支援装置・プログラム 装置・プログラムの概要 支援責任者 所属

近 接 場 分 光 イ メ ー ジ ン グ 支援(S NOM)

新 規 光 物 性,コヒーレ ント 光 制 御, 超 高 速 セ ン サ ー, 光加工・メモリ,エネルギー情報 伝達,ナノデバイス 等に向けたフェムト秒時間分解近接場顕微鏡支援。空 間分解能 50 nm,励起光 T i : sapphi re(780–920 nm 100 fs)または各種CW。透過,ラマン,非線形に対応。超 高速分光を兼備した世界的に類のないオリジナル機器。

岡本裕巳教授 光 分 子 科 学 研 究領域

波 長 可 変 ピ コ 秒 時 間 分 解 ラマン分光支援

フォトニック有機ナノデバイスなどの物性評価のため のピコ秒時間分解波長広域連続可変ラマン分光システ ム。195 nm から 11 mm まで連続波長可変,4 ps,3 mJ 以上,1000 Hz。

西 信之教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

高 分 解 能 透 過 分 析 電 子 顕 微鏡支援(T E M)

ナノ粒子などの構造および電子状態解析のための電界 放 出 型 エ ネ ル ギ ー フ ィ ル タ ー 高 分 解 能 透 過 電 子 顕 微 鏡。J E OL J E M-3200,粒子像分解能 0.17 nm,格子像分 解能 0.10 nm。走査像観察,nm 領域の元素分析,液体 窒素冷却も可能。主に施設利用に対応。

西 信之教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

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磁 気 光 学 表 面 ナ ノ 磁 性 評 価支援

新規磁性材料・ナノ磁性体の磁気特性観測を目的とし た紫外磁気円二色性光電子顕微鏡(U V M C D P E E M) と超伝導磁石X線磁気円二色性(X M C D )計測支援。 UV MC D PE E M は当グループ発見に基づく全く独創的 な機器。空間分解能 50 nm,超高速時間分解計測にも 対応予定。超伝導 X M C D は U V S OR 利用,7 T ,2 K 。 他に超高真空磁気光学 K err 効果測定装置(0.3 T ,100 K ) も提供。

横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

集 束 イ オ ン ビ ー ム 加 工 と 走査電子顕微鏡支援(S E M/ F IB )

集束イオンビーム加工と走査電子顕微鏡を提供。主に 施設利用に対応。

横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

X線光電子分光支援

(E S C A )

汎用のX線光電子分光器(Al,Mg-Ka線利用)を提供。 施設利用として気軽に利用いただける。

横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域

ナ ノ バ イ オ 素 子 機 能 形 態 解析支援(生体 T E M)

有機材料・ナノバイオ素子等の形態と機能を解析する ための高分解能透過電子顕微鏡 i n si tu 観察支援。独創 的で世界的にも例のない位相差法を備えた生体関連物 質に特化した透過電子顕微鏡。電子顕微鏡元素イメー ジング法も併用可能。

永山國昭教授 生理研

超高磁場 N M R ナノ計測支 援

920M H z N M Rに よ る 難 結 晶 蛋 白, 固 体 ナ ノ 触 媒, 有 機 − 無 機 複 合 コ ン ポ ジ ッ ト, カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ, 巨大天然分子などの精密構造解析支援。現状世界最高 性 能 の 920M H z N M R 。 固 体, 多 次 元, 3 重 共 鳴 に も 対応。

魚住泰広教授 生 体・ 錯 体 分 子 科 学 研 究 領 域

分 子 電 子 素 子 の た め の 素 子作成と電気・光特性計測 支援

自己組織化を利用した 10nm 級のナノギャップ電極作 成とその電気特性の計測,点接触電流画像原子間力顕 微鏡によるナノ構造体の電流特性空間分布の計測,定 フ ォ ト ン 照 射 装 置 を 利 用 し た 素 子 の 光 特 性 の 計 測。 G PC 分取システム,マグネトロンスパッター,定フォ ト ン 照 射 装 置, 金 属 顕 微 鏡, 極 低 温 真 空 プ ロ ー バ ー, 点接触電流イメージング原子間力顕微鏡,全自動分子 合成装置など。

小川琢治教授 分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター

大規模量子化学計算支援 ナノ分子系の構造・電子状態・機能の研究およびこれ らの設計と合成の高効率化のための高精度大規模量子 化学計算シミュレーション。クラスター PC 。

永瀬 茂教授 理 論・ 計 算 分 子 科 学 研 究 領 域

機 能 性 有 機 ナ ノ 材 料 設 計 支援

機能性有機ナノ材料,金属半導体クラスター,生体系 を規範とした有機ソフトナノ分子などの合成経路探索 設計。鈴木・永田・櫻井准教授が各専門分野の分子物 質に対応。

鈴木敏泰准教授 永田 央准教授 櫻井英博准教授

分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター

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海洋生物由来の生物活性ナノ有機分子の構造解析

光合成での光電変換機能をもつアンテナ系タンパク質色素複合体の組織 化と機能評価

S iC からのカーボンナノチューブ生成制御に関する研究 有機金属ナノクラスターの創製:構造と機能制御 電気化学的処理をしたポルフィラジン薄膜の表面分析

分子研定規法を利用したナノ電極形成、およびナノ電極による分子の電 気特性評価

高分解能電子顕微鏡による炭素系超潤滑物質の構造の解明 有機分子−遷移金属複合系における円磁気二色性実験

マイクロ波選択加熱による非平衡動的過程を応用したナノ物質創成実験 研究

高共役π分子修飾電極の作成と評価

固体電解質のナノスイッチの作製とその特性評価

久 保 田 高 明 南 後   守 丸 山  隆 浩 日 野  和 之 阿 波 賀 邦 夫 中 里  和 郎 三 浦  浩 治 松 本  吉 弘 高 山  定 次 宇 野  英 満 長 谷 川  剛 北海道大学大学院薬学研究院

名古屋工業大学つくり領域 名城大学理工学部材料機能工学科 愛知教育大学教育学部 名古屋大学大学院理学研究科 名古屋大学大学院工学研究科 愛知教育大学教育学部

(独)日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 核融合科学研究所・連携研究推 進センター

愛媛大学総合科学研究支援セン ター

(独)物質・材料研究機構

課 題 名(後期) 支援装置 代 表 者

有機金属ナノクラスターの創製:構造と機能制御 高周期元素の特性を活かした新規ナノスケール分子の開発 S iC (000-1) 基板の表面酸化に関する研究

光合成での光電変換機能をもつアンテナ系タンパク質色素複合体の組織 化と機能評価

室温で動作する単電子デバイスの作製の試み

高周期 14 族元素を骨格に有する特異な芳香族系の構築とその電子状態及 び物性の解明

920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いたタンパク質・複合糖質の構造解 析

刺激応答性星型ポリマーを用いた金属ナノ微粒子の創製 有機分子保護金属ナノクラスターの分子設計および機能発現 リコンビナントプリオン蛋白質のアミロイド線維の構造解析 単層カーボンナノチューブの選択的相互作用の発現と解明 ナノサイズ分子キャビティを活用した活性化学種の反応性制御 金属ナノ微粒子配列における局在光物性と局所配列構造の相関解明

金属内包フラーレンの化学修飾による内包金属の動的制御 金属内包フラーレンに基づくスピンサイト交換システムの機構解明 高分解能電子顕微鏡による炭素系超潤滑油物質の構造の解明 超高磁場固体 NMR を用いたラセン高分子の動的構造の比較 ナノスケール磁石構築のための磁気異方性金属錯体の開発 固体電解質ナノスイッチの作製とその特性評価

海洋生物由来の生物活性ナノ有機分子の構造解析 大規模計算を用いた酵素反応メカニズムの理論的解析

マイクロ波選択加熱による非平衡動的過程を応用したナノ物質創成実験 研究

ガスソース法により作製したカーボンナノチューブの透過電子顕微鏡観 察

金属結合型ペプチドの高次構造解析と超音波ゲル化機構の解明

日 野  和 之 時 任  宣 博 丸 山  隆 浩 南 後   守 根 岸  良 太 斎 藤  雄 一 山 口  芳 樹 青 島  貞 人 藤 原   尚 桑 田  一 夫 前 田   優 後 藤   敬 北 島  正 弘

赤 阪   健 土 屋  敬 広 三 浦  浩 治 平 沖  敏 文 加 知  千 裕 長 谷 川  剛 小 林  淳 一 麻 田  俊 雄 高 山  定 次 丸 山  隆 浩 高 谷   光 愛知教育大学教育学部

京都大学化学研究所 名城大学理工学部材料機能工 学科

名古屋工業大学つくり領域 科学技術振興機構

埼玉大学大学院理工学研究科 名古屋市立大学大学院薬学研 究科

大阪大学大学院理学研究科 近畿大学理工学部応用化学科 岐阜大学人獣感染防御研究セ ンター

東京学芸大学教育学部 東京工業大学大学院理工学研 究科

(独)物質・材料研究機構ナノ 計測センター、筑波大学大学院 数理物質科学研究科

筑波大学先端学際領域研究セ ンター

筑波大学先端学際領域研究セ ンター

愛知教育大学教育学部 北海道大学大学院工学研究科 東邦大学理学部化学科

(独)物質・材料研究機構 北海道大学大学院薬学研究院 大阪府立大学大学院理学系研 究科

核融合科学研究所・連携研究推 進センター

名城大学理工学部材料機能工 学科

大阪大学大学院基礎工学研究科

5-5-2 2007 年度採択課題一覧(分子科学研究所担当分)

(1) 協力研究

課 題 名(前期) 支援装置 代 表 者

NMR 分子素子 E S C A T E M E S C A 分子素子 T E M 磁気光学 T E M 分子素子 分子素子

T E M 量子計算 E S C A 分子素子 分子素子 量子計算 NMR 有機材料 量子計算 NMR 量子計算 量子計算 S NOM

量子計算 量子計算 T E M NMR 分子素子 分子素子 NMR 量子計算 T E M T E M NMR

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(2) 施設利用

課 題 名(前期) 支援装置 代 表 者

正常型リコンビナントプリオンタンパク質の構造解析 酸化亜鉛電析膜の内部ナノ構造観察

L B 膜の導電特性評価

自動車部品用途への適用を狙ったポリマー系ナノコンポジット材料の開発

桑 田  一 夫 吉 田   司 佐 藤  弘 一 前 川 美 穂 子 岐阜大学・人獣感染防御研究セ

ンター

岐阜大学大学院工学研究科

(株)荏原総合研究所 東海興業(株)研究開発部 NMR

S E M/F IB 分子素子 T E M

課 題 名(後期) 支援装置 代 表 者

自動車部品用途への適用を狙ったポリマー系ナノコンポジット材料の開発 フッ化物を用いた光学素子に関する研究

赤外近接場顕微分光装置に使用する微小開口カンチレバーの試作開発 磁性酸化物のナノ加工と観察

3糖体酵素基質/阻害剤の構造解析

固体 NMR によるゴムの加硫機構解明、劣化メカニズム解明 実装不良発生メカニズムの解明および対策技術の確立 酸化亜鉛電析膜の内部ナノ構造観察

分子クラスター電池を構成する電極材料の分析 炭素マトリックスに担持した分子クラスターの状態観察 固体担持金属ナノ触媒を用いた有機変換反応の開発 固体パルスシーケンスの作成

前 川 美 穂 子 小 野  晋 吾 森 脇  太 郎 夛 田  博 一 清 水  弘 樹 小 林  将 俊 浅 井   正 吉 田   司 吉 川  浩 史 吉 川  浩 史 鈴 鹿  俊 雅 大 谷  圭 一 東海興業(株)研究開発部

名古屋工業大学大学院工学研究科

(財)高輝度光科学研究センター 大阪大学大学院基礎工学研究科

(独)産業技術総合研究所北海 道センター

S R I 研究開発(株)

ソニーイーエムシーエス(株) 幸田テック

岐阜大学大学院工学研究科 名古屋大学大学院理学研究科 名古屋大学大学院理学研究科 琉球大学理学部海洋自然科学科 日本電子(株)名古屋支店 NM グループ

T E M S E M/F IB S E M/F IB S E M/F IB NMR NMR S E M/F IB S E M/F IB E S C A T E M NMR NMR

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5-6 最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用

次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発

(文部科学省)

分子科学研究所は2006年4月より表記の「最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトにお ける「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発」拠点としてナノ分野の「グランドチャレンジアプ リケーション研究」を推進している。並行して行って来た NA R E GI プロジェクトは2007年度を最終年度としており, グリッドミドルウエアの実証研究が最終段階に入っている。本項では「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエ アの研究開発」拠点の概要,研究体制,研究開発スケジュール,進捗状況,今後の課題について以下に述べる。

5-6-1 概要

次世代スパコンプロジェクトは我が国が IT 分野における国際的なリーダーシップを確保ために「旗艦」的コンピュー タを構築し,それを下方展開することによって我が国に強固な I Tインフラを整備することを目指す国家プロジェク トである。また,このプロジェクトの目的は単に「巨大なマシン」を構築することにとどまらず,同時に,我が国の 計算科学における新しいパラダイムの創出を目指すものである。

計算科学はこれまでも物質設計や地球環境などの分野で重要な役割を果たし,社会の技術基盤のひとつとして確固 たる基盤を築きつつある。とりわけ,物質や生体分子の様々な機能が発現するナノスケールの現象をターゲットとす る計算科学は21世紀における産業を担うべき「知的ものづくり」や個人の遺伝情報に基づく「テーラーメード医療」 にとっての技術基盤として大きな期待を集めている。他方,ナノスケールの現象は伝統的な理論化学物理の視点から も極めて挑戦的な課題である。特に,量子力学,統計力学,分子シミュレーションなどの理論・計算科学的方法論にとっ て,これまでの枠組みを大幅に越えること無くして決して達成しえない研究課題である。

以上の観点から我々は本プロジェクトのナノ分野におけるグランドチャレンジ研究課題として,下記の3つの課題 を設定した。

(1) 次世代ナノ情報・機能材料

超高密度実装,高速応答,省エネルギーなどを目指す電子デバイス設計の計算科学的方法論を構築。 (2) 次世代ナノ生体物質

生命体を構成するナノ物質のシミュレーションを可能とする方法論を確立することにより,テーラーメード医療を 目指した次世代生命体シミュレーションのナノ基盤を構築。

(3) 次世代エネルギー

化石燃料に代わる恒久的エネルギー源として太陽エネルギーの固定,利用,貯蔵技術,特に,セルロースから酵素 反応によりエタノールを生成する技術における計算科学的方法論の確立に貢献。

これらの研究課題は国の「重点推進4分野」の中において重要な技術・課題として位置付けられていることからも 明らかなように,21世紀の「知的ものづくり」や個人の遺伝情報に基づく「テーラーメード医療」,化石燃料に代わ る恒久的エネルギー源の確立,など産業・医療の技術基盤を確立する上で本質的であるばかりでなく,人類の存立基 盤そのものにも関わる重要課題であり,「グランドチャレンジ課題」と呼ぶにふさわしいターゲットであると考えて いる。

我々は本プロジェクトにおいてこれらの課題に挑戦する上で必要な新しい理論や計算科学的方法論あるいは計算プ ログラムを構築し,そのことを通じて次世代スパコンプロジェクトの成功に貢献したいと考えている。

(15)

5-6-2 研究体制

ナノ統合拠点の研究体制を下図に示す。

5-6-3 研究課題(個人)

ナノ統合拠点の研究課題を下表に示す。 1 次世代ナノ情報機能材料

① 次世代ナノ複合材料

課題名 氏名 所属

(1) ナノ複合電子・強度材料

材料における界面とナノスケール格子欠陥の構造と特性 石橋 章司 産業技術総合研究所 合金材料の内部組織形成と材料特性に関するマルチスケール解

毛利 哲夫 北海道大学大学院工学研究科

(2) ナノ構造構成要素とその複合系による次世代電子デバイス設計

ナノ構造構成要素と複合系の機能 押山  淳 東京大学大学院工学系研究科

第一原理ナノ構造探査 常行 真司 東京大学大学院理学系研究科

(3) 電子励起によるナノ複合電子材料の機能制御

可視光で誘起されるグラファイト−ダイヤモンド非平衡相転移 那須奎一郎 高エネルギー加速器研究機構 ナノ物質および固体表面での光励起キャリアーダイナミクスと

高速化学反応

杉野  修 東京大学物性研究所

(4) 大規模電子状態計算と精密計算によるナノ複合材料設計

高効率大規模電子状態計算手法の開発 寺倉 清之 産業技術総合研究所 拡散量子モンテカルロ法による分子の安定性の厳密計算 川添 良幸 東北大学金属材料研究所

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② 次世代ナノ電子材料

課題名 氏名 所属

(1) 次世代ナノ非線形光学素子開発

強相関電子系におけるナノ非線形光学デバイスの理論 遠山 貴己 京都大学基礎物理学研究所 非マルコフ・非負定値経路積分法によるナノ・サイズ多電子系

の光励起シミレーション

那須奎一郎 高エネルギー加速器研究機構

光誘起集団電荷移動と伝導の制御 米満 賢治 自然科学研究機構分子科学研究所 (2) 新機能ナノ量子デバイス開発

ナノスケール電子状態を用いた新規機能設計 永長 直人 東京大学大学院工学系研究科 低次元電子系の特異な状態の探索 小形 正男 東京大学大学院理学系研究科 量子ドット列におけるバンドエンジニアリングと電子物性制御 田村 浩之 NTT・物性科学基礎研究所 (3) スピン注入ナノスピンエレクトロニクス素子開発

ナノスピンエレクトロニクス理論の構築 前川 禎通 東北大学金属材料研究所 複合系の量子伝導シミュレーションとナノスケールデバイス設

井上順一郎 名古屋大学大学院工学研究科

スピン注入型ナノ電子デバイス 市村 雅彦 日立製作所基礎研究所

③ 次世代ナノ磁性材料

課題名 氏名 所属

(1) 超高記録密度磁気デバイス材料の構造制御

自己組織化を用いたナノ磁性材料 常行 真司 東京大学大学院理学系研究科 (2) 新しい磁性発現機構をもつナノ磁気素子の開発

分子磁性体での局所磁気構造 宮下 精二 東京大学大学院理学系研究科

ナノ磁性の第一原理計算 赤井 久純 大阪大学大学院理学研究科

(3) 新しい動作原理による超高記録密度磁気デバイスの開発

格子変形の自由度のもとでの磁気相転移 藤堂 眞治 東京大学大学院工学系研究科

強相関電子系における新奇量子相 常次 宏一 東京大学物性研究所

量子磁性体における自発的空間対称性のやぶれ

—ダイマー・ストライプ・量子液体—

川島 直輝 東京大学物性研究所

2 次世代ナノ生体物質

課題名 氏名 所属

(1) タンパク質高度シミュレーション新規方法論の開発 量 子 化 学 計 算 に よ る タ ン パ ク 質 - リ ガ ン ド 相 互 作 用 の 解 析 と 結合エネルギーの高精度予測—高精度 F MO 法—

北浦 和夫 産業技術総合研究所

拡張アンサンブルシミュレーションによるナノサイエンス研究 岡本 祐幸 名古屋大学大学院理学研究科 タンパク質フォールディングおよび高次構造形成のメカニズム

の分子論的解明

木下 正弘 京都大学エネルギー理工学研究所

生体分子系のプロトン輸送に関する基礎過程 三浦 伸一 金沢大学大学院自然科学研究科 (2) イオンチャネルの分子過程

イオンチャネルの選択性

—蛋白質によるイオンの選択的認識—

平田 文男 自然科学研究機構分子科学研究所

(3) ウイルスの分子科学

ウイルスの全原子シミュレーション 岡崎  進 自然科学研究機構分子科学研究所 ナノチューブ中の水、水溶液:制約空間がもたらす新規な物性

と相転移ダイナミクス

田中 秀樹 岡山大学大学院理学研究科

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(4) 細胞膜の分子科学

がん細胞膜の構造ゆらぎと膜融合

—R IS M 法からのアプローチ—

平田 文男 自然科学研究機構分子科学研究所

細胞膜の構造ゆらぎと膜間相互作用—分子動力学法からのア プローチ—

岡崎  進 自然科学研究機構分子科学研究所

がん発現にかかわる分子スイッチの分子動力学計算 斉藤 真司 自然科学研究機構分子科学研究所 (5) ナノ生体物質輸送

生体モデル膜への物質結合—結合量と結合位置の自由エネル ギー解析—

中原  勝 京都大学化学研究所

ミセル生成とミセルによる物質の取り込み、輸送 岡崎  進 自然科学研究機構分子科学研究所 細胞膜(脂質二重膜)における低分子の透過機構の研究 三上 益弘 産業技術総合研究所

高分子ゲルのダイナミクスと物質輸送 茂本  勇 東レ(株)機能材料研究所 (6) 新規ナノ生体物質の創生と利用

既知ナノ生体物質の機能メカニズム解明 北尾 彰朗 東京大学分子細胞生物学研究所

3 次世代エネルギー

課題名 氏名 所属

(1) 光触媒による太陽エネルギーの固定

固体触媒の励起過程を取り扱う理論的手法の開発と酸化チタン 系への応用

中井 浩巳 早稲田大学理工学術院

(2) 光合成による太陽エネルギーの固定

励起エネルギーおよび電子移動速度の定量的予測のための理論 手法の開発

藪下  聡 慶應義塾大学理工学部

ナノスケール分子における光誘起量子多体系ダイナミクスの理 論的解明

信定 克幸 自然科学研究機構分子科学研究所

光エネルギー変換共役分子の先進的電子状態モデリング 柳井  毅 自然科学研究機構分子科学研究所 (3) 化石燃料からの脱却を目指すアルコール燃料サイクルの確立

酵素反応によるセルロース分解とアルコール生成の計算科学 平田 文男 自然科学研究機構分子科学研究所

新規無触媒化学サイクルの創成 中原  勝 京都大学化学研究所

(4) 燃料電池の作動原理における分子過程の解明

ナノ分子系の精度高い大規模量子化学計算の開発と応用 永瀬  茂 自然科学研究機構分子科学研究所 界面和周波発生分光の計算科学と液体 高分子界面の微視的構

造解析への応用

森田 明弘 東北大学大学院理学研究科

非断熱現象を利用した分子設計 南部 伸孝 九州大学情報基盤センター ナノスケール構造に基づくマクロ特性解析のための階層シミュ

レーション法の実現

兵頭 志明 豊田中央研究所計算物理研究室

(5) 高効率物質変換

ナノスケール複合遷移金属錯体による省エネルギー高効率物質 変換反応の理論開発

榊  茂好 京都大学大学院工学研究科

溶液内及びタンパク質場における励起分子のエネルギー移動と 緩和過程

加藤 重樹 京都大学大学院理学研究科

(6) 電極反応の解明

高度連成シミュレーションによる凝縮系界面の電子構造とダイ ナミックス

青柳  睦 九州大学情報基盤センター

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5-6-4 研究・開発スケジュール

ナノ統合拠点の研究・開発スケジュールを下図に示す。

5-6-5 研究の進捗状況と課題

(1) グランドチャレンジ中核アプリの選定

昨年度の後半から本年度の前半にかけて,上記グランドチャレンジ3課題を解決するための中核となる6本のアプ リケーションプログラムを選定した。それらは固体や分子の電子状態計算,液体・溶液系の統計力学および分子シミュ レションなどナノ分野の計算科学にとって不可欠の理論・方法論であり,物性科学(固体電子論)から3本,分子科 学領域から3本のプログラムを選定した(下表参照)。

(19)

これらの内5本は理研に設置されたターゲットアプリ検討委員会において次世代スパコンの概念・基本設計用の ターゲットアプリとして選定され,概念・基本設計に貢献した。また,これらのうち分子動力学シミュレーションプ ログラムおよび実空間密度汎関数(R S D F T )プログラムに関しては次世代スパコンに向けた高度化(超並列化など) の作業をすでに開始している。

(2) ナノ統合シミュレーションプログラム

ナノスケールの諸現象は無限の広がりをもつ均一系と不均一な少数多体系が複雑にからみあったマルチスケール・ マルチフィジックス現象であり,単一の理論や物理では対応できないものがほとんどである。上記6本の中核アプリ は単一の物理現象(例えば,分子の電子状態)を解明する上では強力な武器であるが,それだけではナノ現象に太刀 打できない。ナノ現象を解明するためにはこれらの理論・方法論およびプログラムを様々に組み合わせた方法論を開 発する必要がある。しかしながら,全く異なる「物理」を組み合わせる場合「竹に木を継ぐ」ようなやり方では両方 の方法論が死んでしまう。異なる階層の「物理」を整合的に結合する新しい理論・方法論の開発が必要である。(液 体 の 統 計 力 学(R I S M 理 論 ) と 分 子 の 電 子 状 態 計 算 法(S C F ) を 結 び つ け て, 溶 液 内 の 電 子 状 態 計 算 を 可 能 に し た R IS M-S C F はその例である。)さらに,従来,各階層の物理に対応するプログラムは異なる研究者によって開発された ているため,それらのデータ構造もまちまちであるという事情も考慮する必要がある。これらの要請を考慮し,ナノ 現象の多様性に対応するアプリケーションソフトとして開発を進めているのが「ナノ統合シミュレーションプログラ ム」である。その構造,機能および特徴は次のとおりである(下図参照)。

・個々の物理現象を高速に計算する6本の中核ソフト。

・それらの中核ソフトを多様な仕方で組み合わせてナノ現象に対応するための付加機能ソフト(物理変換・結合機能)

・中核ソフト間のデータ変換と共有を可能にする機能(GIA NT )

・ユーザーの負担を最小限にして初期データ生成機能(IGNIT ION)

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(3) NA R E G I ナノ実証研究

N A R E G I プロジェクトからの継続として,量子化学計算,分子動力学法,固体電子論,統計力学,物性物理等の方 法論に基づき,ナノ物質の構造とその機能発現の解明に対し,NA R E GI 環境の有用性の実証を進めている。

6月中旬から分子研グリッドコンピューティングシステムにグリッドミドルウェアb2版のインストール作業を開 始し,インストールが完了した機能から確認テストを進め,9月末に D etaG rid を除くインストールが完了した。その 後,グリッドミドルウェアb2版でのメタコンピューティングおよびハイスループット計算などに関する実証として, アプリケーション(下記アプリケーション一覧の 1 から 9)を用いたテストを実施してきた。これらの確認テスト, 実運用に向けた実証研究用アプリケーションを通して約70件の問題点を見出し,情報研および関係機関の協力のも と問題解決を進めている。平成19年度は N A R E G I プロジェクトの最終年度にあたる。そのため,これまでの実証研 究用アプリに加え,下記一覧の 10 から 22 の新たに13本のアプリケーションを追加募集し,これらの22本のアプリ を用いた実証を進めている。

また,分子研グリッドコンピューティングシステムと物性研をはじめとするユーザーサイドクラスタとの間でのナ ノサイエンス V O 形成を進め,P S E機能を用いたアプリケーションの配信,V O 内の利用可能計算サーバを有効活用 などの実証を行う。

さらに,統合的グリッド環境での一般利用をめざし,1月末にはプロジェクト参加者への講習会を岡崎および東京 で開催し,2月からは分子研グリッドコンピューティングシステムを中心とする V O において,グリッド環境の一般 利用を開始する。

最終評価のために用いるアプリケーション一覧

1 MP2(GridMPI) 永瀬(分子研)

2 非断熱遷移(GridMPI) 那須(物構研)、石田(東芝) 3 熱力学的積分(GridR PC ) 岡崎(分子研)

4 密度行列繰り込み群(GridR PC ) 遠山(京大) 5 双極子系の E wald 和(GridR PC ) 富田(物性研)

6 R IS M-R eplica 交換 MC (連成計算) 平田(分子研)、岡本(名大) 7 MD -MO(連成計算) 岡崎(分子研)、森田(東北大) 8 Gaussian 1000 本(ハイスループット) 高棹(旭化成)

9 大規模 MD 可視化(可視化) 岡崎(分子研) 10 レプリカ交換 MC (GridMPI) 岡本(名大)

(21)

11 大規模 MD (GridMPI) 兵頭(豊田中研) 12 有限要素法(GridMPI) 市村(日立) 13 不規則系コンダクタンス(GridMPI) 伊藤、井上(名大) 14 トランスコリレイティッド法電子状態計算(GridMPI) 常行(東大) 15 A L PS /parpack+looper(GridMPI) 藤堂(東大) 16 スピン系のツリー近似計算(GridMPI) 川島(物性研) 17 積分方程式を用いた第一原理量子輸送計算(GridMPI) 小林(筑波大) 18 QMA S (GridMPI) 石橋(産総研) 19 rtdft(GridMPI) 矢花(筑波大) 20 F PS E ID (GridMPI) 宮本(NE C ) 21 有限要素基底の電子状態計算法(GridMPI) 土田(産総研) 22 3D -R IS M-F MO(連成計算) 高見(九大)

(4) 各チームの研究進捗状況

本年度のグランドチャレンジ3課題の進捗状況は次のとおりである。(運営委員会資料、2007年8月31日(金) 時点)

1①.次世代ナノ情報機能・材料 次世代ナノ複合材料研究進捗報告 1) 研究内容の進捗

・平面波基底 P A W 法に基づく第一原理材料シミュレータ Q M A S をプラットフォームとて,各種物性パラメータの 微視的分布を得る計算ツールを開発・整備し,界面・点欠陥を含 む様々な物質で適用研究を行なった。(石橋、 田村、田中、香山、寺倉)

・絶縁膜中の欠陥への電子のトラップ準位について,クラスターモデルを用いた解析法を検討し,計算方法による 準位の違いを調べた。(加賀爪、佐々木)

・カーボンナノチューブの曲げに関する形状記憶効果のメカニズムを明らかにした。(尾方)

・アルミニウムの粒界構造と粒界特性の関係を明らかにすべく,幾つかの粒界について第一原理計算が可能なよう に構造モデルを準備した。(上杉)

・組織形成のマルチスケール・シミュレーションにおける空間スケールの定量化のため,スピン系を対象として提 案されていた経路確率法の自然逐次法を空孔媒介型拡散機構の取り扱いへ拡張した。(大野、毛利)

・Pd-H 系の規則相の全エネルギーを種々の空孔濃度を含む場合に対して F L A PW 法により算出した。(陳、毛利)

・F e-Ni 系 Invar 合金の熱膨張特性と相安定性に及ぼす弾性エネルギーの効果の計算を行った。(陳、毛利)

・正方格子を対象に,クラスター変分法とフェーズフィールド法を組み合わせた規則−不規則逆位相境界の時間発 展挙動の計算を行った。(毛利)

・炭素ナノ物質内のナノ空間への異種物質の挿入可能性と新奇物性の発現,またシトクローム酸化酵素中でのプロ トン移動機構の解明について,密度汎関数理論に基づく計算を行った。(押山)

・超高圧下のシリケイト構造変化について新しい知見を得た。(土屋)

・W ang- L andau のアルゴリズムに基づくマルチカノニカル法で,圧力一定のシミュレーションを安定動作させるア ルゴリズムを得た。(常行、吉本)

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